2023年8月22日火曜日

祥月命日

8月22日。今日は室岡松孝師の祥月命日。

先生の芸に初めて触れたのは祖母を通して45年以上は前になるでしょう。そして直接教えを乞うたのは31年前。お稽古を通して、箏曲の素晴らしさ、山田流の格好良さ、古典芸能の奥深さに完全に目覚めさせられました。そして私にこの道で生きていく決意をさせた人生の師匠です。 

 もう18年も経ちました。 

痛切に感じます。この年齢でもう一度教えを乞いたい。

20歳のころ「あんたはまだ若いから、今から心に入るなんて無理。たくさん勉強していきなさい。」と言われました。そろそろ“心”に近づけてきているだろうか。


「この世の中楽しいことはたくさんあるのに、何も好き好んで箏なんかやらなくてもいいのに。」なんて言われたこともありましたが、それは逆説的な意味であると思っています。

その証拠に「あんたとお稽古するとスッキリする!」といつもおっしゃっていましたもの。


この間藝大の大先輩方とお食事する機会があり、久しぶりに色々お話をしまいた。芸について考えることも多く。そんなこともあり、今年の先生の命日は何か感慨深いものがあります。

山田流の演奏家で室岡松孝先生に教えを受けた方は多くいらっしゃいます。その方それぞれの中に室岡先生は今も生き続けていらっしゃるでしょうし、もちろん私もです。私の軸です。今は先生の音源だけが頼みですが、そこから多くのものを盗んで行きたいです。そして師匠に叱られぬよう、情熱をもって古典を第一に考えて精進していきたいと思います。


 1枚目は演奏会。恐らく20年以上前。

これは「乱輪舌」だったような。


これは「江の島曲」。男性のみで舞台が組めたことを喜んでいらっしゃいました。

これは、とある演奏会での記念撮影。となりは奥様。

これは某録音時。この箏は形見として私が引き継いで、大切に使わせていただいています。この箏に負けない芸を目指して!


合掌


2023年5月16日火曜日

【演奏会報告】新発田市芸能音楽祭 箏・三絃・尺八演奏会

 毎年5月の第2日曜日といえば???


母の日です。


ではありますが、私にとって5月の第2日曜日というと「新発田市芸能音楽祭 箏・三絃・尺八演奏会」の日なのであります。この演奏会は「第○○回」というのがないのではっきりしませんが、45回目くらいだと思います。なので、私の人生のほとんどの5月第2日曜はこの演奏会ということになるのです。

新発田市文化団体連合会の邦楽部門に登録している団体が出演するのですが、一番多いときは箏6団体、尺八2団体ありました。しかしながらやはり高齢化による会員減少や稽古場閉鎖などで、昨年から私たち箏曲松濤會と美すず会さんの箏2団体のみとなりました。1団体が2~3曲演奏するのですが、箏の曲というのはそれぞれで箏の音階が違うので、毎回調絃(チューニング)する必要があります。団体が多ければその時間をしっかり取れるのですが、2団体となると基本的に交互となるため、音階があまり違わない曲にして調絃時間を短縮するような工夫をしなくてはなりません。そのうえお客さんが飽きないようなプログラムにしなくてはならない・・・頭を悩ますことになります。

しかし、団体数が少ないメリットもあり、連絡が密に取れるというか、一緒に演奏会を作り上げていこう!というような一体感が生まれます。昨年の集客がコロナの影響もあり大変残念な結果だったので、今年は何か新しいことをやってなんとか邦楽人口の拡大に繋げていこう!という気概を持って企画しました。その結果、少々安易ではありますが「~和楽器でつづる日本の四季~」というテーマを設けて選曲しました。また、お客さんにも積極的に参加してもらって双方向で作り上げる演奏会という方向性を持たせるため、ワークショップも企画しました。

ということで、演奏曲は〔新年〕〔春〕〔夏〕〔秋〕〔冬〕〔新年〕〔新年〕で7曲。途中にワークショップを挟むプログラムとなりました。

まず

1.〔新年〕藤永検校作曲「八千代獅子」(美すず会)

2.〔春〕山田検校作曲「花暦」(箏曲松濤會)

江戸の桜の名所を巡ってもらいました。



3.〔夏〕中能島欣一作曲「ひぐらし」(箏曲松濤會)

ザーーーーッと降るにわか雨を表現した器楽合奏部分と、雨があがった後の景色をうたった唄部分、そして最後のひぐらしの鳴き声に“あわれ”を感じていただきました。




そしてここでワークショップです。ポスターや会場入口の看板などでも大々的にアピールしてみましたの。

まず「箏」の歴史や楽器についての豆知識、流派の話をしました。私のオリジナルテキスト!


その後、舞台の上で楽器体験。






よく考えたら、普段のぼらない舞台の上で、しかも初めて弾かされるって拷問ですよね(笑)しかし、8名の方がその“餌食”になってくださいました。ご協力ありがとうございました。

休憩を挟んで、デモンストレーションとして

4.〔秋〕中能島欣一作曲「秋静か」を独奏で。


5.〔冬〕レット・イット・ゴー~ありのままで~(美すず会)

6.〔新年〕初世中能島松声作曲「万歳」(箏曲松濤會)

新年に江戸城へ参候した三河万歳を題材にした曲で、華やかな気分になっていただきました。


7.〔新年〕山登万和作曲「松上の鶴」(合同)

演奏会の締めは、山田流箏曲を代表する祝儀曲で。


約2時間の公演でした。


来年はもっと工夫をして、さらにたくさんのお客さんに来ていただきたいものです。


それにしても、格安な年会費のみでこんなに自由に色々やらせてもらえるなんて、主催の新発田市民文化会館と新発田市文化団体連合会はすごいぞ!有難うございます。



さて、この日のお昼ご飯は、鮨「登㐂和」さんのお稲荷さん。手の込んだ大変美味なお稲荷さんでした。


色々立て込んでいたここ2か月くらいでしたが、ここから2週間はアホみたいに暇なので気が抜けたのか、この翌日(ぎりぎり昨日ですが)少々発熱。

しかし、夜アルコール消毒をしたところ、もう時間的にぎりぎりですが(ただいま23:35)本日(火曜日)は朝からすっかり平熱に戻っております。やはり酒は百薬の長であります。皆様適度な飲酒で健康を保ちましょう。


ちなみにこの演奏会、来年は5月12日ですよ~。


それでは皆さまご機嫌よう。











2023年5月12日金曜日

【演奏報告】G7新潟財務相・中央銀行総裁会議関連

 新潟市では昨日からG7財務相・中央銀行総裁会議が行われています。市内の主要な場所には警察官がたくさんいて、悪いことは全然してない(ちょっとしてるかも)のに、なんか緊張してしまいます。

たいていこういう大きい会議があると夕食会というものも行われ、そこでは様々なアトラクションがあるわけです。有難いことにここ何回か新潟で行われるG7やG20での大臣夕食会で演奏しています。今回も依頼があり二つ返事で引き受けました。なにせ海外のお偉い方々に演奏を聴いていただける訳ですから、こんなに嬉しいことはありません。

今回は、G7ハイレベル・コーポレートガバナンス・ラウンドテーブルの夕食会でした。場所はホテルオークラ新潟の最上階。新潟一最高な景色が見れる場所です。


これはリハーサルの前に撮ったので、ガンガン入ってくる西日避けでブラインドが閉まっていますけどね(笑)これが開くと、それはもう。

ちなみに反対側(東南側)の景色はこんなです。分割で撮影したら、グーグルがパノラマ写真にしてくれました。すごいね。つなぎ目が分からない。
日本一の大河“信濃川”とそこに架かる萬代橋。向こうは五頭連峰や飯豊連峰。画像の一番左の高い建物が会議が行われている“朱鷺メッセ”です。

会場のテーブルはすでに食事の準備がされていて、メニューもありました。フランス料理か(笑)

むむ?私がいる?メニューの裏面には私や箏、演奏曲の紹介が掲載されていました。

演奏時間は19時。それまでは控室でのんびりしていました。サンドイッチ、美味しかった。


姿見で自撮りしたら、なんかシュッと撮れました。息吸ってます。

そして19時。演奏したのは「六段の調」。メイン会場で行われた歓迎レセプションでは太鼓や古町芸妓さんの踊りを見学しているということだったので、「それならばこちらは〔静〕でいこう。最上階の雰囲気のいいレストランだし、日本のわびさび、序破急の美しさで勝負だな」という理由で選曲しました。夕食会の途中であるにもかかわらず、演奏してる最中は話し声も全くせず、おそらく皆さんが私に注目してくださっていたのであろうと推測されます。気持ちよく弾けました。

いや、私の後ろの景色に魅了されていたのかもしれないです。だってこれだもん。

これは私のうしろに広がっていたであろう日本海側の景色。これがワイドに見えるんですもの。ぜひ画像を拡大してご覧ください。奥の山影のようなものは佐渡です。こんなに近くに見えるなんて!と驚く方も多いです。日没後の最高に美しい瞬間。これは演奏する数分前に撮影したものなので、ほぼこれです。

演奏後は皆さん笑顔で私に拍手をしてくださっていました。

なんとも充実感のあるお仕事ができました。次回も話がくるといいな~。



それでは皆さまご機嫌よう。









2023年4月29日土曜日

【演奏会報告】吉良ライオンズクラブCN60周年記念チャリティーコンサート

 今日は“昭和の日”。昭和が終わって、もう35年も経つんですよね。早いものです。今回も振り返りです。2月のことですが、もう二か月も経っています。早いもんです。

2月11日と12日、所属している“和楽器オーケストラあいおい”で愛知県西尾市にお邪魔しましてきました。今回は吉良ライオンズクラブCN60周年記念チャリティーコンサート。と書き出しつつ、やはり二か月も前になってしまったので、色々忘れてますなぁ。

まずは本番前のショットから。銘々が銘々の事をしています。ま、そりゃそうですよね。

かっこよいチラシです。


プログラムは、久石譲さんの「HANA-BI」や「Oriental Wind」、元タカラジェンヌのお三方と地元吉良中学の合唱団のみなさんと「The Sound of Musicメドレー」、古典の「都の春」など。聴いている方はもちろん、なにしろ弾いているほうも楽しいプログラム。
衣装も華やか!

そして“チーム山田”


こちらは↑の撮影風景。

この前日は移動日だったので、名古屋界隈を少々ぶらぶらしました。
11:24東京発で名古屋へ。

車内ではこんなことをしちゃいますよねー。

名古屋について、駅前のミッドランドスクエア内にあるこちらへ。

昼間っから贅沢しちまいました。





その後は熱田神宮へ。


熱田神宮といえば、山田流界隈の方はこの歌詞を思い浮かべるでしょう。

「〽熱田の社、伏し拝み」

これは、日野俊基が幕府転覆の企ての罪で関東へ連行される道行を題材にした山田流の名曲「雨夜(うや)の月」の中の一節です。

ということでお約束の伏し拝み。


ということで、楽しい遠足でした。


それでは皆さまご機嫌よう。








2023年4月14日金曜日

【演奏会報告】横山佳世子の邦楽サロンVol.28

 一旦書き始めると立て続けに書いて、飽きると全く書かなくなる(いや、飽きてる訳ではないです)私のブログ“武藤祥圃の隠れ家”へようこそ。やはり発信していかないと忘れ去られちゃいますからね(;^ω^)最新情報に加えて、振り返って過去のことも書いていこうと思います。


さて、3月に大阪府茨木市で生田流箏曲横山佳世子さんの演奏会があり、お邪魔してきました。横山さんと初めてご一緒したのは「横山佳世子の邦楽サロン」の2回目で、実に9年前のこと。それ以来の共演です。そして今回は28回目で、同じく生田流の澤村祐司さんも一緒でした。ちなみに澤村さんは1回目のゲストだったそうです。


こう見るとありふれたごく普通の記念写真に見えますが、実は横山さん、以前事故にあい足首を骨折。当時「もう正座はできない。」とお医者さんに言われ、好きな古典をきちんと出来ないのか、と絶望。しかしそこが横山さんの強いところ。治療とリハビリに励み、ご覧の通りなんの苦労もなかったかのように正座している訳です。今回は正座ができるようになった記念、地歌復帰記念として、がっつり古典の三味線をやりたいということで企画されたものだったのです。
ただ、がっつり古典といっても、箏好きな人や古典好きな人向けという訳でなく、箏なんて聴いたことがない、古典はちょっと苦手という人をファンにさせようというもの。箏を知らない人に向けて演奏する時は、とかく“易しい曲を”とか、“みんなが知っている曲を”とか、“流行っている曲を”などとなるのですが、横山さんも私もそれには反対の立場です。箏のファンや古典のファンが少ないと嘆くのは簡単ですが、裏を返せば、好きにさせるような演奏、企画をする努力を怠っているだけなのです。その努力を続けることが聴衆を育て、ファン層を厚くし、古典を盛り上げることに繋がるのです。

ヤバい、アツくなってきたので一旦終了。

いやいや、我々こと箏のことや古典のことになるとアツいんです。
今回のタイトルも「究極の手事物ー現代(いま)さらにアツい!」でした。


会場は茨木市市民総合センターのセンターホール。とても良い天気。

私が演奏したのは、「笹の露」。別名「酒」ともいわれる地歌手事物の名曲です。私は箏、横山さんが三味線。

歌詞の一部を・・・
〽酒は量りなしと宣いし聖人は、上戸にやましましけん、三十六の失ありと諫め給いし仏は、下戸にやおわすらん~

〽劉伯倫や李太白、酒を呑まねばただの人、吉野竜田の花紅葉、酒がなければただのとこ、よいよいよいのよいやさ。

ちょっとよく分からないですよね。しかしですよ、ここに( )で現代語訳を付けたとしましょう。 

〽酒は量りなしと宣いし聖人は、上戸にやましましけん、三十六の失ありと諫め給いし仏は、下戸にやおわすらん。
(酒は飲み始めると際限がないといった孔子は上戸だったのだろう。酒を呑むと三十六の過失を生ずると諫めた釈迦は下戸であったに違いない)

〽劉伯倫や李太白、酒を呑まねばただの人、吉野竜田の花紅葉、酒がなければただのとこ、よいよいよいのよいやさ。
(劉伯倫や李白も酒を呑まなければ平凡な人であっただろう。吉野の桜、竜田の紅葉も酒がなければ風情のない平凡な場所にすぎない。よいよいよいのよいやさ。)

一気に親近感が沸き、大昔の歌詞なのに現代の酒飲みでも言いそうなことで面白くないですか?

そういうことなんですよ。そして、曲の聴きどころをあらかじめ説明する。これをよどみなく、たまに笑いを交えながら話すというスキルを身につけなきゃいけないんです。その努力なしに、古典をやっても興味をもってもらえないし・・・とか、難しすぎて分かってもらえない・・・なんて言ってはいけないんです。

あらま、またアツくなっちゃった。

話を戻し、今回はこれをスクリーンで説明しながら演奏するという流れでした。そして、「ここが箏と三味線でのアツいバトルなんだ!」という場所をはっきりさせて、聴衆をその気にさせるという工夫でした。これは澤村さんと横山さんの「八重衣」のリハーサル。向かって左に字幕が出るのです。

「笹の露」「八重衣」ときて、最後は「吾妻(東)獅子」。箏は私。澤村さんが三味線本手、横山さんが三味線替手。同じ曲なのに、お二人の生田流と私の山田流で寸法や緩急が違うのです。不思議ですよね。ま、三味線が主で箏はあくまでも従で装飾的という生田流と、箏が主導権を握り、三味線はそれに従って付いていくという山田流の演奏スタイルの違いがそうさせているのでしょうけれど、今回は生田流のスタイルを重視しつつ、山田流の切れ味の良い洒落弾きも弾いて曲にスパイスを与えるといった感じでした。
これは本番です。この企画の主催である(公財)茨木市文化振興財団さんのTwitterからお借りしました。

3曲演奏したのちに、我々が客席にいき「地歌をオワコンにさせないためには・・・」※オワコン:終わったコンテンツ(旬が過ぎて人気がなくなった作品を揶揄する言葉)という座談会的な企画もあり、三者三様のアツい思いを話し、また、お客様からの質問や要望をうかがいました。



舞台に人がたくさんいますが、話をしつつ、楽器を近くで見たい人、触ってみたい人、写真を撮りたい人は、どうぞ舞台に上がってください。という企画。
本来日本の芸能はお座敷で演じられるもので、演者と聴衆は近いところにいた訳です。お互いの息を感じられる訳です。現代のように舞台での演奏だとしても、そういうこちら側のそういう意気込みが大切だし、こういう触れ合いも演奏や演者、聴衆にとってその日のことを印象深いものにしますよね。
この邦楽サロンは通常はお客様も舞台に上がって、そこで間近で演奏を聴くスタイルだそうで、まさに息を感じる企画ですよね。

私も再開しなきゃな。


ここからは当日の写真アラカルトです。

①舞台から客席を臨む

②楽屋

③盗撮風の自撮り

➃打ち上げのお店「はなせ」。お料理すべて美味なり。 

➄“量りなし”のビール。はなせ編。

➅“量りなり”のビール。帰りの新幹線編。

よいよいよいのよいやさ。


それでは皆さまご機嫌よう。