2023年4月14日金曜日

【演奏会報告】横山佳世子の邦楽サロンVol.28

 一旦書き始めると立て続けに書いて、飽きると全く書かなくなる(いや、飽きてる訳ではないです)私のブログ“武藤祥圃の隠れ家”へようこそ。やはり発信していかないと忘れ去られちゃいますからね(;^ω^)最新情報に加えて、振り返って過去のことも書いていこうと思います。


さて、3月に大阪府茨木市で生田流箏曲横山佳世子さんの演奏会があり、お邪魔してきました。横山さんと初めてご一緒したのは「横山佳世子の邦楽サロン」の2回目で、実に9年前のこと。それ以来の共演です。そして今回は28回目で、同じく生田流の澤村祐司さんも一緒でした。ちなみに澤村さんは1回目のゲストだったそうです。


こう見るとありふれたごく普通の記念写真に見えますが、実は横山さん、以前事故にあい足首を骨折。当時「もう正座はできない。」とお医者さんに言われ、好きな古典をきちんと出来ないのか、と絶望。しかしそこが横山さんの強いところ。治療とリハビリに励み、ご覧の通りなんの苦労もなかったかのように正座している訳です。今回は正座ができるようになった記念、地歌復帰記念として、がっつり古典の三味線をやりたいということで企画されたものだったのです。
ただ、がっつり古典といっても、箏好きな人や古典好きな人向けという訳でなく、箏なんて聴いたことがない、古典はちょっと苦手という人をファンにさせようというもの。箏を知らない人に向けて演奏する時は、とかく“易しい曲を”とか、“みんなが知っている曲を”とか、“流行っている曲を”などとなるのですが、横山さんも私もそれには反対の立場です。箏のファンや古典のファンが少ないと嘆くのは簡単ですが、裏を返せば、好きにさせるような演奏、企画をする努力を怠っているだけなのです。その努力を続けることが聴衆を育て、ファン層を厚くし、古典を盛り上げることに繋がるのです。

ヤバい、アツくなってきたので一旦終了。

いやいや、我々こと箏のことや古典のことになるとアツいんです。
今回のタイトルも「究極の手事物ー現代(いま)さらにアツい!」でした。


会場は茨木市市民総合センターのセンターホール。とても良い天気。

私が演奏したのは、「笹の露」。別名「酒」ともいわれる地歌手事物の名曲です。私は箏、横山さんが三味線。

歌詞の一部を・・・
〽酒は量りなしと宣いし聖人は、上戸にやましましけん、三十六の失ありと諫め給いし仏は、下戸にやおわすらん~

〽劉伯倫や李太白、酒を呑まねばただの人、吉野竜田の花紅葉、酒がなければただのとこ、よいよいよいのよいやさ。

ちょっとよく分からないですよね。しかしですよ、ここに( )で現代語訳を付けたとしましょう。 

〽酒は量りなしと宣いし聖人は、上戸にやましましけん、三十六の失ありと諫め給いし仏は、下戸にやおわすらん。
(酒は飲み始めると際限がないといった孔子は上戸だったのだろう。酒を呑むと三十六の過失を生ずると諫めた釈迦は下戸であったに違いない)

〽劉伯倫や李太白、酒を呑まねばただの人、吉野竜田の花紅葉、酒がなければただのとこ、よいよいよいのよいやさ。
(劉伯倫や李白も酒を呑まなければ平凡な人であっただろう。吉野の桜、竜田の紅葉も酒がなければ風情のない平凡な場所にすぎない。よいよいよいのよいやさ。)

一気に親近感が沸き、大昔の歌詞なのに現代の酒飲みでも言いそうなことで面白くないですか?

そういうことなんですよ。そして、曲の聴きどころをあらかじめ説明する。これをよどみなく、たまに笑いを交えながら話すというスキルを身につけなきゃいけないんです。その努力なしに、古典をやっても興味をもってもらえないし・・・とか、難しすぎて分かってもらえない・・・なんて言ってはいけないんです。

あらま、またアツくなっちゃった。

話を戻し、今回はこれをスクリーンで説明しながら演奏するという流れでした。そして、「ここが箏と三味線でのアツいバトルなんだ!」という場所をはっきりさせて、聴衆をその気にさせるという工夫でした。これは澤村さんと横山さんの「八重衣」のリハーサル。向かって左に字幕が出るのです。

「笹の露」「八重衣」ときて、最後は「吾妻(東)獅子」。箏は私。澤村さんが三味線本手、横山さんが三味線替手。同じ曲なのに、お二人の生田流と私の山田流で寸法や緩急が違うのです。不思議ですよね。ま、三味線が主で箏はあくまでも従で装飾的という生田流と、箏が主導権を握り、三味線はそれに従って付いていくという山田流の演奏スタイルの違いがそうさせているのでしょうけれど、今回は生田流のスタイルを重視しつつ、山田流の切れ味の良い洒落弾きも弾いて曲にスパイスを与えるといった感じでした。
これは本番です。この企画の主催である(公財)茨木市文化振興財団さんのTwitterからお借りしました。

3曲演奏したのちに、我々が客席にいき「地歌をオワコンにさせないためには・・・」※オワコン:終わったコンテンツ(旬が過ぎて人気がなくなった作品を揶揄する言葉)という座談会的な企画もあり、三者三様のアツい思いを話し、また、お客様からの質問や要望をうかがいました。



舞台に人がたくさんいますが、話をしつつ、楽器を近くで見たい人、触ってみたい人、写真を撮りたい人は、どうぞ舞台に上がってください。という企画。
本来日本の芸能はお座敷で演じられるもので、演者と聴衆は近いところにいた訳です。お互いの息を感じられる訳です。現代のように舞台での演奏だとしても、そういうこちら側のそういう意気込みが大切だし、こういう触れ合いも演奏や演者、聴衆にとってその日のことを印象深いものにしますよね。
この邦楽サロンは通常はお客様も舞台に上がって、そこで間近で演奏を聴くスタイルだそうで、まさに息を感じる企画ですよね。

私も再開しなきゃな。


ここからは当日の写真アラカルトです。

①舞台から客席を臨む

②楽屋

③盗撮風の自撮り

➃打ち上げのお店「はなせ」。お料理すべて美味なり。 

➄“量りなし”のビール。はなせ編。

➅“量りなり”のビール。帰りの新幹線編。

よいよいよいのよいやさ。


それでは皆さまご機嫌よう。










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